今回は、ASDタイプの人が苦手とする“変化”と“変更”について、子育てシーンの実例を交えて分かりやすいように説明していきたいと思います。
【ASD特性例】“変化”が苦手
- 進学、転校、進級
- 引越、模様替え
- 就職、転職
- ライフステージの変化
我が家では、夫がとくに苦手感の強い分野です。
【例1】
ひとりで模様替えをがんばって、彼の驚く顔を想像しながらワクワクして出迎えたら、頭を抱えてしゃがみ込まれました(環境の変化を拒絶)。
【例2】
夫は子どもを設けることも嫌がりました。わたしと二人の生活から変化することが生理的に受け入れ難かったのです。
この分野については、よく話し合って進むほかありません。
わたしにとっての必要性、そうすると嬉しいことを説明し、協力を求めるようなスタンスで話をすると少しだけ交渉がスムーズかもしれません。
今では、模様替えにも協力してくれるようになりましたが、苦痛であることに変わりありません。苦痛なことをどうにかやってくれているので、親切な仕事じゃなかったとしても、目をつぶるスキルをわたしのほうが身に着けました。
【ASD特性例】“変更”が苦手
- 予定の変更
- アプローチの変更…行き方、方法
- 目線の変更
- 前言撤回
予定の変更
共有しているスケジュールだけでなく、脳内の大小のスケジュールの変更も苦手の対象となるところが難点です。
例えば、自分の中で “今日はあれをして、その後これをしてから、あそこに行こう” とイメージしていた…というのが大スケジュール。
“上着を取りに行って、そのあと顔を洗って…” というようなのが小スケジュールです。
脳内で勝手に決まっていることで、もちろん非公開。小は特に把握のしようもないレベルです。
ですが、変更が強いられるような事態になれば途端にパニック(怒りの爆発)になってしまうので、慎重に対応しなくてはなりません。
【例3】
朝の準備の時間にウッカリやらかしてしまうのですが、『〇〇やりなさいよ?』はNGです。
別に今すぐにやりなさいと言っているつもりはなく、漏れのないよう注意喚起しただけなのですが、息子は『今すぐやりなさい』だと受け取るようで、小スケジュールを妨害されたことでパニックになります。
ごはんを食べているとき、あるいは完全に停止しているときに声をかけるよう気をつけるようにしています。
こんなのも変更に当てはまります。
以前グレーゾーンの夫とこんなことがありました。
【例4】
朝、夫が出勤した直後、わたしは犬の散歩に出かけました。ふと見ると、すぐそこに夫がいたので、駅まで一緒に行こうと駆け寄りました。
すると、それに気づいた夫が顔をしかめながら、駆け足(本気の)で逃げ始めたのです。
えええ?!!!
どゆこと?
わたしがパニックです。
もういいや、とゲンナリして諦めました。
あとで聞いたら、『今朝は音楽を聞きながら駅まで歩こうと決めていたから』ということでした。
理解不能ですが、でも仕方ないのです。
どうしても“変更”は難しいのです。
生理的なものなのです。
アプローチの変更
【例5】
息子の身の回りの物はよく行方をくらまします。四六時中、探し物をしている息子ですが、探すことについて一向にスキルアップする気配はありません。
探し方が雑なので見つかるものも見つからないのです。
“ものをどかして探しなさい”とよく言い聞かせているのですが、それが有効なのは時と場合によります。
ある日、小さくて透明なものがハラリと落ちて見当たらないときがあったのですが、
それを探すときも息子は律儀に物をどかしていました。上から落ちたものが、物の下に入り込むことはあり得ませんが、思考が柔軟でないため、探すものによって方法(アプローチ)を変えるということが出来ません。
目線の変更
アプローチの変更と近いですが、目線の変更については、別の記事でご紹介していますのでよろしければご一読ください。
前言撤回
多くの問題は、息子の “欲求にまつわる交渉事” に対してした返答をわたしが撤回した場合に発生します。
自分がしたいこと、欲しいものについて、状況を慮ることなく、わたしに執拗に交渉する特性が息子にはあります(汗)
朝、必死でお弁当をつくっているときにも交渉を断行します。
そんなときに交渉されると、適切な判断ができず、思わず『いいよ』と言ってしまうことがしばしばあります。かわいい我が子の頼みとなると、基本的にはイエスと言いたいので、気が緩むとついうっかり…です。
後になって息子のためにならないと思い直し、撤回しようものなら、大波乱が巻き起こります。
だから我が家では、
と規定されています(笑)
このルールは非常に有効です。
変更が苦手なのは、わがままとは違います。
極めて生理的、感覚的なもので、自分の意思でコントロールできるものではありません。
だから、苦痛を味あわせないように、なるべく変更が生じないよう、家庭では周囲が注意を払う必要があります。
でも、家庭から一歩出れば、撤回を受け容れなければいけない場面に必ず出くわします。ですので、“変更は生じるもの”という免疫をつけていく必要もあります。
今回ご紹介した実例で、ASDタイプが苦手とする “変化”や“変更” とはどんなものなのか?イメージできたでしょうか?
お役に立てたら幸いです。
これまでの子育ての学びや気付きをこのブログでご紹介することで、同じ境遇の方のお役に立てたらうれしいです。