ASDタイプに何かを教えるときには、ポイントがあります。注意点というべきでしょうか。
ASDタイプにあるあるな “意思のないマナー違反” 。
今回はマナー違反について教えるときを例として、ASDタイプに何かを教えるポイントをご紹介していきたいと思います。
マナーに限らず、何かを教えるときに応用が効く情報だと思います。
ASDあるあるですが、悪気なくマナーに違反しがちです
ASDタイプの子育てあるあるじゃないかと思うのですが、イラっときたり、カチンときたりする出来事が多発しませんか。
それは、ASDタイプはマナーの感覚が希薄で、マナーに反すること、つまり相手が不快に思うようなことを悪気なくしてしまうことが多いからです。
そして、なぜ希薄かといえば、マナーとはすなわち相手への気遣いのことであり、ASDタイプの最も苦手とする分野だからです。
そうされたら、自分はどう感じるか?
という、他者の目線で逆の立場を想像することが苦手なのです。
例えば、我が家の男性陣には “他人を押しのけがち”、つまり他者を物質的に扱う傾向があります。
まるで相手がそこにいないかのように振る舞ってしまうイメージです。
具体的にどういうものなのか?以下の記事もお読みいただくと、この記事の内容が分かりやすいかもしれません。
次に、他者を物質的に扱う傾向を表すエピソードを具体的に挙げます。
ある朝、息子に持たせるお弁当を作っていました。同時進行で朝ごはんを作って…テンパりながらお弁当を詰めているわたしの目の前を、食べカスの魚の皮を捨てようとする手がぬーっと通過していきました。
なぜ無言?なぜ面前?
なぜ(これから食べる)弁当の上に、(食べカスの)ゴミを通過させる?
今になれば、もちろん全てのなぜ?に自分で答えられます。
特性ゆえのもので悪気はありません(=できない)。
でも、マナーに反することをされて生じる不快感を出ないようにすることはできないので、どうしてもイラっとはしてしまいます。
その後、怒るかどうかについてはコントロールすべき範疇にあると思いますが…怒ってしまうことしばしばです。
なぜマナー違反をしがちなのか?
これに類するエピソードは数知れないのですが、これは、立場を置き換えて物事を見る、つまり他者の目線でものごとを想像するのが苦手な特性からきています。
自分がそれをすることで相手が不快に思う
ということが想像できていません。
あと、心理的、実質的に、点(狭い範囲)で物を見がちな傾向もその一因だと思います。
(心理的)自分がしようと思うことにしか着目できない
(実質的)自分がしようと思うことの対象しか目に入っていない
という感じです。
以下記事で、点で物を見がちな例をご説明しています。
他の例としては、“人の前を横切る”。
これも同じような事案といえます。他者視点の想像力の弱さに加えて、ボディイメージ(脳内にある自分の身体に関するイメージのこと)が弱い特性も影響していると思います。
自分の身体(例えば幅)のイメージが弱いので、例えばぶつかりそうでも進んでしまうということです。
ASDっ子にマナーを教えるときに直面しがちなこと
ASDタイプにマナーを学び取れというのは難しい相談なので、親が教える必要があります。
でも、先述の通り、マナーの土台が他者への想像力でできており、ASDタイプにとっては不得意分野ですので、教えることは結構難しいです。
「他人の面前に黙って手を出すなんて失礼なことなのよ。」と言っても…
「どうして?なんで失礼なの?ぜんぜん分からない。」となってしまいます。
されたらどう感じるか?想像することができないため、なかなか理解できません。
これまでにも折に触れ、“他人の面前はダメ” という話をしてきたのですが、彼の腹にストンとは落ちていきません。
ここで補足ですが、「どうして?なんで失礼なの?ぜんぜん分からない。」は、素直な気持ちで言っています。反抗しているわけではないのです。
なかなか“面前はダメ” が理解&定着しない理由を次でご説明します。
ASDっ子が、知ったマナーを今後に活かせるように教えるポイント
息子の場合は、数多あるマナーを総括して意味づけること、つまり情報を大きく括るための上位概念を持つことが難しい傾向があります。
どういうことか、今回のマナーの例でいうと、事前に通知することなく他者の面前を横切る等、“他者の生物的なテリトリーを侵すような行為” は、相手に恐怖感や不快感を与えてしまうのでしてはいけないという理解を自力で得ることが難しいということです。
これらは一例ですが、 “他者の生物的なテリトリーを侵すような行為” であり、『他者を脅威にさらすかもしれない』ものとして共通性を見出せることが重要なのです。
とはいえ、これからしようとする自分の行動が、それにあたるか判断するのは、ASDタイプには難しいかもしれません。
では、そうすればよいか?次でご説明します。
ASDタイプへの教え方【具体例】
息子の場合は、マナー違反を指摘された “そのできごと自体” を丸々記憶し、同じ行動を自分に禁じるような発想になります。
これは、前述の通り、共通性を見出すことがそもそも得意ではないからです。
まったく同じシチュエーションが起きれば経験を活かすことができますが、あまり応用が効きくとは思えません。
要は、記憶された事案の情報は脳内でバラバラに格納されているだけ(下図)で、関連付けするための意味付けがなされていません。
今回のマナーの例で言うと、過去の違反事案について、どういう理由で好ましくないのかの意味づけができておらず、個別の事案をただ記憶するに止まっているがゆえに、検索しづらい、活かしにくい “データベース” になってしまうということです。
下図のデータベースのように、意味付け、類するものをグルーピングしてあるのが理想であるものの、それを自力では構築しにくいのが特性であるということです。
マナーの意味づけを助けるために、『他人の面前で何かすることがなぜいけないのか』等の説明をして、上位概念の形成を補助する必要があります(上図の右のオレンジ部分)。
『他人の面前に黙って手を出すなんてダメよ!』では足りないことを養育者が認識し、“なぜ” を具体的に教えてあげるとよいと思います。
先ほどご紹介したASD当事者用の別の記事から抜粋しますが、例えばこんなイメージです。
・・・・・・・突然ぬっと手を出して物を取られると、このパーソナルスペースが侵される感覚があり、生理的に不快感を覚えるということです。 そういう不快感を他人に与えないために、マナーがあるのです・・・・・・
まとめ
発生した案件に対して、都度なんとなく「それはマナー違反よ!」を続けても、息子の腹には落ちません。
なぜいけないのか?を理解して、いろいろな経験が意味付け、分類されているよいデータベースづくりを手伝ってあげたいと思います。
得意ではありませんが、いつか応用できるようになってくれたらいいなと思っています。
これまでの子育ての学びや気付きをこのブログでご紹介することで、同じ境遇の方のお役に立てたらうれしいです。