先日、息子が5年ぶりの検査(WISC-IVなど)を行い、結果の説明を受けてきました。
WISCとは知能検査のことで、特性(困り事)の把握をするために実施するものとして位置づけられているようです(発達障がいの診断をするための直接的な材料ではないという意味です)。
今回は、大きく分けて、
- 検査(WISC-IV)後に感じたモヤモヤ。欲しい情報がない。
⇒検査(WISC-IV)で欲しいのはこんな情報。 - 検査(WISC-IV)でなにが分かるのか、分かったのか
について、お伝えしていきます。
検査(WISC-IV)の報告書には、素人の養育者が欲しい情報が少ない
困り事を把握するための検査であり、そのフィードバック(報告書)なのですが…
1回目、2回目ともに共通して…
う~む・・・
と、なんだかモヤモヤ。でも、そのモヤモヤの正体が突き止めきれない自分がいました。
それが、最近になってやっとモヤモヤの正体を掴めたように思います。
『う~む』の後には『それで?』という気持ちが続いている自分がいました。
そのことについて、ここから詳しくご説明します。
検査報告書の内容が、親にとって喉から手が出るほど欲しい情報だったかというと、正直そうではない。つまり、情報の項目・量・深さともに、特性を持つ子を育てる親の助けになってくれるものではないから、モヤモヤしていたのです。
『ニーズ』と『フィードバック』にズレがあるのです
検査(WISC-IV)の報告書には、ある一定のフォーマット(形式)があるようです。
ぜひ、あの現状のフォーマットから離れることを検討してほしいです。
例えばグラフ、いりません。
あのグラフを見て、実生活に役立てられることはありません。
ぶっちゃけ検査結果の評点(数字)のフィードバックも必要性をほぼ感じません。あのあたりは、内部資料として院内で共有していただければとよいのだと思います。
子どもの養育、療育の必要に日々迫られている身としては、エビデンスとして “添付してくれてもいい” …程度の必要性しか感じていません。
結論としては、本当に欲しいのは以下のような情報です。
今後、養育者である自分がすべきことがイメージできる情報
今後について、選択・判断するための情報
これをもっと詳細にご説明していきます。
WISC-IV検査後に欲しい情報【1】
養育者としての自分がすべきことがイメージできる情報
まず前提として…
なにが分かっていないのかすら、分かっていない
それを医療関係者の皆さんに知っていただきたいです。
検査に訪れた段階の素人養育者は質問すらできないのだと。
有意義な質問ができるのはそれができるほどの情報と理解とを持ち合わせているからです。
上記の通り、右も左も分からない状態の養育者は、発達障がいの医療の今、また医療機関がいったい何をしてくれるものなのか自体、よく分かっていません。
1)特性の説明の他、息子にとっての理想的なプランの全体像を教えてほしい
当事者本人の状況や家庭の事情で、すべて取り入れられるかは分かりませんが、検査直後のスタートラインでは、いったん共有しうる全ての情報をご提示いただき、専門家としての推奨プランを伝えていただきたいのです。
できたら、“ただ提示する” のではなく、プロとしての推奨プランとして提示してほしいのです。
また、そのプランのうち、医療機関がマストと考えているもの、やれればベターと考えるもの、そのレベル感も含めて伝えてほしい、つまり絶対必要なのか、選択肢なのかも知りたいのです。
わたしの場合は、なんとなく療育機関の一覧表を一枚渡されただけで、その必要性を強く感じなかったので、息子には必要のないものというご判断だと思っていました。実際がどうだったのかは分かりません。
2)我が子向けのそのプランは、どうすれば実現可能なのかを教えてほしい
前述の通り、発達障がいを専門とする医療機関がいったい何をしてくれるものなのか自体、よく分かっていません。だから明確に伝えて欲しいのです。
WISC-IV検査後に欲しい情報【2】
我が子と似た特性を持つ他のASDさんの参考情報
いちばん知りたいのは、特性を持つ当事者本人の困り事と、認知のズレから生じるであろう当事者家族の困り事にまつわるの参考情報です。
例えば、以下のようなイメージです。
検査の結果、おたくのお子さんの特性概要が分かりましたので、当院の知見から、お子さんと似た特性の方の情報をご参考までにご紹介します。ご提供する情報項目は以下のものです。
我が子と似たタイプの特性をお持ちのお子さんの情報が、今後の養育のための地図のようなものになるのです。
個人が特定されず、同じ境遇の人の役に立つのであれば、情報を提供することに抵抗はないと思うのです。逆の立場に立てば、それは自分のメリットにもなるからです。
プライバシーがきちんと保護されるのであれば、データベース化とその活用に反対する親御さんなんていないのではないでしょうか。
つまり、医療機関が長年のご経験をもとに類似ケースをマッチングして、養育者が家庭内療育にあたって必要であろう参考情報を、ピックアップして提供してほしいということです。
また、その方のこれまでの家庭内療育などの成功例だけでなく、失敗例とその原因、背景など、専門家の分析情報が付与されていたら、どんなに助かることでしょう。
その他)検査報告書の読み手に特性がある可能性を考慮してほしい。
また、わたしがモヤモヤしていたこととして、もう一点。
これは、我が家、わたしの特殊事情なのですが、わたし自身に『読み』の困難があります。
報告書を受け取り、読み込む作業はそもそもかなり骨の折れる作業です。
わたしも検査を受けたことで、息子とわたし、別々の臨床心理士さんからの報告書を受け取り、2つの資料を比較したことで気付いたのですが、息子の報告書のほうが、圧倒的に心が折れました。
それは、フォント(字体)が原因でした。明朝体だと集中するのに、ものすごい集中力を要するのです。フォントごときでこんなにも読みづらさが倍増することを改めて実感しました。
発達障がいは、遺伝の要素が大きく、そのことから親にも何らかの特性がある可能性を視野に入れて報告資料を作成していただけると大変ありがたいなと思いました。本人が気付いていれば、フォント指定して資料をくださいなどと事前にお願いできるのですが、わたしのようにはっきりと自覚がない場合もあるからです。
もっと言うと、願わくば、データで欲しい・・・
そうすれば、フォントを変更する、フォントサイズを大きくする、行間を広くするなど、自分用のカスタマイズができるからです。バリアフリーにすることを是非検討してほしいです。
と、理想を語ったところで、現実は変わりません。
もらった報告書をもとに自分で掘り下げる以外に今のところ選択肢はありません。
2回目の検査で受け取った報告書をもとに、自分なりに調査し、咀嚼したことを、公開させていただきます。
あくまでも、一養育者の見立てであることを前提にお読みいただければと思います。
検査(WISC-IV)の結果、やはりASDならではの凸凹がありました
WISC-IVには言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの指標があるのですが、その内容、凸凹の有無の説明を受けました。
検査(WISC-IV)の4指標の各検査内容と理解したこと(概要)
受けた説明と、自分で調べた内容をもとに、調査についてもう少し詳細をご説明します。
言語理解(VCI)
言語理解では、質疑応答形式で5種(※我が子の場合)のテストが実施されました。耳で聞いて、答えるということです。
言語理解は、息子にとっては凸分野でした。
語彙はそれなりに増やしていっているようです。言葉はよく知っており、意味も理解はしているということですが、ここで注意が必要なのは、だからといって、すなわち “息子は言語を用いたコミュニケーションが得意である” ということではないということです。
詳細は、“検査指標を “複合的” に見て理解したこと(例)”で後述します。
習得している言葉は、息子がこれまで耳で聞いて、目で見て覚えてきたものです。耳で聞いた言葉は日常会話や映像媒体等から、目で見た言葉は文字情報から主に得たものです。
前者は口語(話し言葉)、後者は文語(文字で書かれた言語、書き言葉)ですが、息子の場合はその使い分けが上手くできていないようで、文語で会話してしまうことで、聞き手にとっては違和感のある、堅苦しい印象を与える傾向があるようです。
知覚推理(PRI)
平均に収まっているものの、他に比べると息子にとって凹の領域でした。
日頃の様子を見ていると、苦手領域であることが理解できます。
臨床心理士の説明から、視覚的な情報は言語情報に比べて複数の情報要素を持っていて、対象の理解・推理のためには、それら複数の情報要素の中から、場面に応じて必要な情報を選別して用いる必要がある。そういった判断が得意ではないということだと理解しました。
以下わたしの素人理解をイメージ化したものです。
このように、本という言語情報より、本の視覚情報のほうが保持している情報要素が多いですよね。“青い” を用いるか、“分厚い” を用いるか、“開いている” を用いるかは時と場合により判断する必要があり、その判断が難しいということです。
ワーキングメモリ―(WM)
息子の中でもっとも高い凸の分野でした。
ワーキングメモリはどちらかといえば、機械的な記憶、および情報操作で、日常生活においてワーキングメモリ単体で活躍する場面はあまりイメージできない、他の能力との連携があってこそ活かされる能力のようです。
APD的な聴覚情報処理の困難を本人が訴えていることとの整合性から考えて、素人的には理屈がよく分からないのですが、他の指標の結果との掛け算から考えるとなんとなく理解できました。この点についても、“検査指標を “複合的” に見て理解したこと(例)”で後述します。
処理速度(PSI)
息子にとっては凹の分野でした。
この分野の作業に取り組むには、人より時間がかかり、集中力を要するということです。確かに幼い頃からその傾向が顕著だったように思います。小さい頃、ドリルなどに取り組ませようとすると、拒絶していました。また、小学校入学後、漢字の書き取り練習の宿題に取り組むことも苦痛だったのか、取り掛かるまでに時間を必要としましたし、実際の作業時間もかなりかかっていました。
ちなみに、この検査は視覚情報の処理能力に関するものですが、視覚情報に限らず、脳内の情報を書き出す作業は息子にとって困難です。たとえ得意分野のワーキングメモリーを使って、聴覚から記憶した情報であっても、書き出すのは難しい作業になります。
息子は、小さい頃から暗算が得意で、そんな問題も暗算でできちゃうの???と驚くような感じでした。ところが、このようなワーキングメモリの領域の “機械的記憶⇒脳内情報操作” の域を外れて実際の手作業に移ると、とたんに上手くいかなくなるということです。
具体的には、脳内で暗算するのはあんなに得意でも、学校の算数のテストで、脳内で行った演算をひっ算の指定形式にそって記述することを求められたとたんに困難さが顔を出すという具合です。縦のラインがずれてしまって、よく計算ミスをしたりしていました。
視覚情報の処理に限らず、書くこと自体に困難があります。
検査指標を “複合的” に見て理解したこと(例)
検査の説明を受けた後、しばらくして腑に落ちたことがあります。
以前は凸が得意分野、凹が不得意分野ということのように漠然と理解していたのですが、そうではないようです。
こんなふうに例えると伝わるでしょうか。
歌に関する評価指標は例えば以下のようなものがあると思います。
- 音程がしっかりしている
- 音の強弱、つまり抑揚があって、聞き心地がよい
- 曲に合った感情表現がすばらしい
これらの指標のバランスが整っているときに、人はうっとりとして聴き惚れると思いますが…
- 音程はしっかりしているけど、まったく抑揚がなく淡々としている
- 曲に合った感情表現はすばらしいけど、音程がイマイチ
- 音程も抑揚もよいが、なぜか棒立ちで無表情
これだとちょっと聴き心地が良くないかもしれません。
各部門の均衡がとれているほうが良いパフォーマンスにつながりやすいと思います。
つまり、4つの機能分野それぞれが単独で発揮されるシーンはなく、常に様々な機能が複雑に連携・連動して人は活動しているのであり、この4つのバランスが悪い、つまり凸凹である場合に不具合が生じやすいということと理解しました。
具体的に、どんなふうに困り事が生じているのかの例をご紹介します。
ワーキングメモリー凸 × 言語理解凸 × 知覚推理凹
息子は、ワーキングメモリ―は凸であり、今ゲットした材料をその場(脳内)で調理するのは得意。ワーキングメモリ―は機械的記憶、作業のための記憶…でしょうか。
そして、言語理解は凸で言語知識はある。
でも、今ゲットした情報と、もともと持っていた知識を紐づけて活用するようなことは得意ではない。そういうことのようです。
それは、もともと持っていた情報の中から、今キャッチした情報と関連するものを検索することが難しいことに起因するようで、なぜ検索しづらいかといえば、知覚認知の凹により、情報は機械的に記憶しているに止まり、インプットの際にその情報に関するイメージ付与(肉付けのような感じ)ができていないということなのだと理解しました。
参考)“検索”、“照合”、“紐づけ(関連付け)” の不得意さについて、詳しくご紹介しています。
例えば、慣用句は知っているけれど、慣用句自体の成り立ちや概念、使うべきシーンへの理解が伴っていないので使いこなせないということです。
また、図や絵などの視覚情報のほうが言語より持っている情報が多く、かつ情報をどう受け取るかも受け手への依存度が高いため、情報処理が複雑になります。
その対応力が弱いため、画像でイメージしたり物事を理解したりするよりも、定義が明確な言語情報(理屈)で物事を考えるほうが得意ということかなと理解しました。
補足)APD的な特性について
APDとは聴覚情報処理障がいのことですが、聴覚情報を処理するのにも実は視覚情報を用いるそうです。具体的には下図のようなイメージです。
耳で聞いた言語情報を、イメージに変換すると記憶しやすいのだそうです。
知覚推理の凹、処理速度の凹により、息子は視覚情報の取り扱いが得意ではなく、聴覚情報の視覚情報への変換が容易でないために、指示の記憶が上手くいかず、矢継ぎ早に指示されるとパニックしてしまうのかなと思いました。
なお、APD的な聞こえの困難は、上記のような特性によるものの他、選択的注意という認知機能の問題の可能性もあるようです。要するに聴覚の感覚過敏のことです。
選択的注意というのは、例えば都会の喧騒のように、雑多な聴覚情報が大量に交錯する環境で、その時、その人にとって必要な情報のみを識別・選択して、そこだけに注意を向ける認知機能のことだそうです。
ワーキングメモリ―が凸でも、これらの他の原因により、聴覚からの情報を次のアクションに上手くつなげられない場合があるということです。
検査(WISC-IV)結果、理解のまとめ
息子の結果を総括すると、凸特性からインプットは得意。
だけど凹特性の影響でアウトプットがなかなか上手くいかないということのようです。
アウトプットというのは、得た情報をもとに行動したり、作業したりすることです。
また、検査を終えて、直感的に思うこと。
知覚認知は数値的には平均の域ですが、彼の凸凹のバランスの中では、息子にとっての一番のネックになっているような気がしています。
視覚情報は、人間が取得する情報の中で占める割合が圧倒的に高いそうで、このことからも影響が大きいのかなと思っています。
特に、息子にとってのネックとなっているのは、イメージする力だと思っています。
実生活で影響してくるのは、以下のようなことでしょうか。
- 見通し・計画を立てること
- 空気を読むこと
- 状況を把握すること
- 学び取ること
- 自己理解すること
- 相手を思いやること
これらについて、息子の知覚認知の凹を少しでもカバーする術の授け方をこれから探っていきたいと思います。
現時点で、対応していることについて、次に書き出してみました。
知覚認知(PRI)の凹の影響をカバーする、息子への教示【我が家の実例】
図や絵で表す視覚化ではなく、端的な言語情報として可視化(見える化)する
- 文章ではなく、極力キーワードで示す。
- 1画面(枚)の中で表示する情報は少なく。
臨床心理士さん曰く、30歳くらいまでじっくりと時間をかけるつもりでよいとのこと。
そうですね。少しずつ少しずつじっくりコトコト煮込んで、よい出汁の出る男に育ってもらいましょう。